宇宙の始まりと終わり

双子のパラドックスとは何か、宇宙から帰ると年の差はつくのか

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地球のまわりを回る国際宇宙ステーション
Photo: NASA / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

双子の1人が光に近い速さで宇宙へ旅立ち、地球に戻ってくる。すると、旅をした人のほうが若くなっています。おかしな話に聞こえますが、相対性理論の予想で、時計を使った実験でも確かめられています。宇宙ステーションに1年近くいた本物の双子の研究もありますが、こちらは体の変化を調べたもので、年の差の話とは別です。

3行でわかる

  1. 双子のパラドックスは、宇宙を旅して戻った人のほうが若くなる、という相対性理論の思考実験。矛盾に見えるが、行って戻った人だけが向きを変えているので、2人の立場は同じではない。
  2. 動いた時計が遅れることは、旅客機に乗せた原子時計の実験(1972年)などで確かめられている。
  3. NASAの双子研究(2019年)は、宇宙にいた340日で体がどう変わるかを調べたもの。時間の遅れによる年の差は、計算で約0.008秒とごくわずか。

01 わかっていること双子のパラドックスとは何?

宇宙を速く旅して戻った人が、地球に残った双子より若くなる、という話です。どちらから見ても相手が動いているのに、なぜ片方だけ若いのか、という疑問が「パラドックス」と呼ばれます。

相対性理論では、動いている人の時計はゆっくり進んで見えます。地球の人から見れば、旅をする人の時計が遅れます。でも旅をする人から見れば、動いているのは地球のほうです。

答えの鍵は、旅をした人だけが途中で向きを変えて(加速して)戻ってくることです。地球に残った人は向きを変えないので、2人の立場は対等ではありません。相対性理論で計算すると、向きを変えて戻ってきた人の時計のほうが、刻んだ時間が短くなります。

アインシュタインは1905年の論文で、すでに「時計を閉じた道に沿って動かし元の場所に戻すと、置いておいた時計より遅れている」と書きました[1]。

02 どうやってわかったのか本当に年の差がつくと、どうやって確かめたの?

人を光に近い速さで飛ばした実験はありません。代わりに、原子時計を旅客機で運ぶ実験や、速く動く素粒子の寿命の測定で、動いた「時計」が遅れることが確かめられています。

わかっているHafeleとKeating(1972年、Science)[2][3]

原子時計4台を旅客機で世界1周させると、東回りの時計は地上より59ナノ秒遅れて戻ってきました。行って戻った時計が、置いておいた時計とずれることを確かめた実験です。

どうやって: 1971年に定期便で地球を1周させ、地上の時計と比べました。重力の弱い高い所を飛んだ分の効果も合わせて計算し、予想と合いました。詳しくは宇宙では時間の進み方が変わるのかに書いています。

わかっているBaileyら(1977年、Nature)[4]

光の速さの約99.94%で円形の装置を回り続けたミューオン(すぐにこわれる小さな粒)は、止まっているときの約29倍長生きしました。ぐるぐる回って同じ場所に戻ってくる粒の時計が、ゆっくり進んだことになります。

どうやって: CERN(欧州原子核研究機構)の装置で、回るミューオンがこわれる速さを測り、相対性理論の予想と0.2%以内で合いました。

わかっているGarrett-Bakelmanら(2019年、Science)[5]

宇宙ステーションに340日いたスコット・ケリーさんと、地上にいた双子のマーク・ケリーさんを比べました。染色体の端(テロメア)は宇宙で平均約14.5%長くなり、帰ってから約48時間で急に短くなりました。

どうやって: NASAの10の研究チームが、遺伝子・血液・認知力などを調べた研究です[6]。時間の遅れを測った研究ではなく、宇宙での暮らしが体をどう変えるかを調べたものです。1組の双子だけなので、すべての人に当てはまるとは言えません。

03 数字と例えでいうと宇宙から帰ると、どれくらい年の差がつくの?

宇宙ステーションに340日いても、年の差は約0.008秒(計算)です。何年もの差がつくのは、光に近い速さで旅をした場合だけです。

場面年の差身近な例えでいうと
旅客機で世界1周(東回り)59ナノ秒[3]0.000000059秒。1秒の約1700万分の1
宇宙ステーションに340日(ケリーさんの滞在)約0.008秒若い(計算)まばたき1回(約0.1秒)の10分の1よりも短い
光の速さの80%でプロキシマ・ケンタウリまで往復(もしも)地球では約10.6年、旅した人は約6.4年(計算)出発のとき同い年だった双子に、約4.2歳の差がつく
光の速さの99%で同じ往復(もしも)地球では約8.6年、旅した人は約1.2年(計算)約7.4歳の差がつく

宇宙ステーションの値は、高さ400kmの円軌道で1日に約25マイクロ秒遅れる(相対性理論の式でSEADICEが計算)として、340日分を足しました。プロキシマ・ケンタウリまでの距離は約4.24光年とし、加速や減速にかかる時間は省いた「もしも」の計算です。今の技術でそこまで速く飛ぶ方法はありません(プロキシマbまで何年かかるのか)。

04 まだわかっていないこと双子のパラドックスで、まだわからないことは?

時間の遅れのしくみ自体は実験で確かめられています。わからないのは、長い宇宙滞在が体の老化にどう効くかと、人が光に近い速さで旅できるかどうかです。

05関連する記事

06よくある質問

双子のパラドックスはなぜ矛盾ではない?

旅をした人だけが途中で向きを変えて戻ってくるので、2人の立場は同じではないからです。相対性理論で計算すると、向きを変えて戻ってきた人の時計のほうが、刻んだ時間が短くなります。原子時計を旅客機で運ぶ実験でも、東回りに世界1周した時計が、地上の時計より遅れて戻ってくることが確かめられています。

NASAの双子研究で、宇宙にいた兄は若くなった?

時間の遅れでいえば、宇宙ステーションに340日いた分で約0.008秒若くなった計算です(SEADICEの計算)。NASAの双子研究はこの差を測ったものではなく、遺伝子や血液、認知力など体の変化を調べた研究です。

宇宙飛行士は年をとるのが遅い?

ほんのわずかに遅くなります。宇宙ステーションの高さでは、速く動いていることの効果が勝って、時計は地上より1日に約25マイクロ秒遅れます(計算)。1年いても約0.009秒で、体で感じられる差ではありません。

出典

  1. Einstein, A. (1905). Zur Elektrodynamik bewegter Körper. Annalen der Physik 322, 891–921. https://doi.org/10.1002/andp.19053221004
  2. Hafele, J. C., Keating, R. E. (1972). Around-the-World Atomic Clocks: Predicted Relativistic Time Gains. Science 177, 166–168. https://doi.org/10.1126/science.177.4044.166
  3. Hafele, J. C., Keating, R. E. (1972). Around-the-World Atomic Clocks: Observed Relativistic Time Gains. Science 177, 168–170. https://doi.org/10.1126/science.177.4044.168
  4. Bailey, J., et al. (1977). Measurements of relativistic time dilatation for positive and negative muons in a circular orbit. Nature 268, 301–305. https://doi.org/10.1038/268301a0
  5. Garrett-Bakelman, F. E., Darshi, M., Green, S. J., et al. (2019). The NASA Twins Study: A multidimensional analysis of a year-long human spaceflight. Science 364, eaau8650. https://doi.org/10.1126/science.aau8650
  6. NASA. Twins Study. https://www.nasa.gov/humans-in-space/twins-study/