宇宙の始まりと終わり

タイムトラベルはできるのか、未来へは行けて過去へは行けない?

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地球を回るGPS衛星
Photo: US Government / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

タイムマシンは物語の中だけの話でしょうか。実は「未来へ行く」ことは、ほんの少しだけなら毎日起きています。地球を回るGPS衛星の時計は、地上の時計と進み方がずれるからです。一方で「過去へ行く」方法は、紙と式の上で考えられているだけで、できるかどうかは決着していません。

3行でわかる

  1. 未来へ行くことはできる。速く動いた人や、重力の弱い場所にいた人は、ほかの人より時間がゆっくり進む。原子時計や素粒子の実験で確かめられている。
  2. ただし今の技術で行ける「未来」はごくわずか。宇宙ステーションに半年いても、地上の人より約0.0045秒(計算)若くなるだけ。
  3. 過去へ行く方法は、相対性理論の式の上ではいくつか見つかっている。でも実際にできるかはわかっておらず、ホーキングは物理の法則がそれを禁じていると予想した。

01 わかっていることタイムトラベルは本当にできるの?

未来へは、ほんの少しなら行けます。時間の進み方は速さと重力で変わるからです。過去へ行く方法は、理論の上の話にとどまり、できるかどうかはわかっていません。

アインシュタインの相対性理論では、速く動く時計はゆっくり進みます。重力の強い場所の時計もゆっくり進みます。時間の遅れのしくみは宇宙では時間の進み方が変わるのかで詳しく書いています。

時計がゆっくり進んだ人は、戻ってきたとき、ほかの人より少しだけ先の時代にいます。これが「未来へのタイムトラベル」で、物理の法則の中で実際に起きています。ただし、この方法で行けるのは未来だけです。もとの時代へ戻る(過去へ行く)ことは、この方法ではできません。

過去へ行くには、時間の流れがぐるりと輪になって元に戻るような道筋が要ります。物理学者はこれを「閉じた時間的曲線」(過去の自分に戻ってくる道)と呼びます。相対性理論の式はこれを許す答えをいくつか持っていますが、私たちの宇宙にあるかは別の問題です。

02 どうやってわかったのか未来へ行けると、どうやって確かめたの?

旅客機に乗せた原子時計、光に近い速さで回る素粒子の寿命、GPS衛星の時計で確かめられました。過去へ行く方法は、式の上で見つかっただけで、確かめた実験はありません。

わかっているHafeleとKeating(1972年、Science)[1][2]

原子時計を旅客機で世界1周させると、地上の時計に比べて東回りは59ナノ秒遅れ、西回りは273ナノ秒進みました。相対性理論の予想と誤差の範囲で合いました。

どうやって: 1971年に定期便で東回り・西回りに1周し、地上の時計と比べました。飛行機の速さと高さで、時計の進み方が変わります。

わかっているBaileyら(1977年、Nature)[3]

ミューオン(すぐにこわれる小さな粒)を光の速さの約99.94%で回すと、寿命が止まっているときの約29倍に延びました。粒にとっての時間がゆっくり進み、遠い「未来」まで生き残ったことになります。

どうやって: CERN(欧州原子核研究機構)の円形の装置で、回るミューオンがこわれる速さを測りました。

わかっているAshby(2003年、Living Reviews in Relativity)[4]

GPS衛星の時計は、重力が弱いことで速く進み、速く動くことで遅れます。差し引きで地上より1日に約38マイクロ秒速く進むため、打ち上げ前に進み方を調整しています。

どうやって: GPSのしくみの中で相対性理論がどう使われているかをまとめた解説論文です。

有力な仮説Gödel(1949年、Reviews of Modern Physics)[5]

宇宙全体の物質が回っている場合のアインシュタインの式の答えを示しました。その宇宙では、どの場所にも過去の自分に戻ってくる道筋(閉じた時間的曲線)があります。

どうやって: 式を解いた理論の研究です。私たちの宇宙については、宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバンの名残の光)の観測で、宇宙の渦(回転)に関わる偏りに、とても小さい上限がついています[9]。ゲーデルの答えのように宇宙全体が回っている兆しは見つかっていません。

有力な仮説Morris、Thorne、Yurtsever(1988年、Physical Review Letters)[6]

通り抜けられるワームホール(宇宙の離れた2点をつなぐ近道)が作れるなら、その出入り口の片方を動かすことで、過去へ戻れるタイムマシンに変えられる、と論じました。

どうやって: 相対性理論の計算です。そもそも通り抜けられるワームホールが作れるかは、量子力学と重力のよくわかっていない問題にかかっている、と論文自身が書いています。

有力な仮説Hawking(1992年、Physical Review D)[8]

過去へ戻る道筋ができかけると、そこで量子力学の効果によるエネルギーがとても大きくなり、道筋ができるのを妨げるだろう、と論じました。これを「時間順序保護仮説」(物理の法則が過去への旅を禁じているという予想)と名付けました。

どうやって: 理論の計算にもとづく予想で、証明されたわけではありません。

03 数字と例えでいうと未来へは、どれくらい行けるの?

今の技術ではごくわずかです。宇宙ステーションで半年過ごしても、地上より約0.0045秒(計算)先の未来に着くだけ。何年も先へ行くには、光に近い速さが必要です。

場面時計のずれ身近な例えでいうと
旅客機で世界1周(西回り)273ナノ秒進んだ[2]0.000000273秒。まばたき1回(約0.1秒)の約37万分の1
GPS衛星(高さ約2万km)1日に約38マイクロ秒速く進む[4]光は38マイクロ秒で約11km進む。調整しないと位置がそれだけずれる
宇宙ステーションに半年約0.0045秒、地上より遅れる(計算)地上の人より約0.0045秒「未来」に帰ってくる
光の速さの99%で1年旅をする(もしも)時間の進みが約7.1倍ゆっくり(計算)自分が1年過ごす間に、地球では約7.1年たつ
光の速さの99.99%で1年旅をする(もしも)時間の進みが約71倍ゆっくり(計算)自分が1年過ごす間に、地球では約71年たつ

宇宙ステーションの値は、高さ400kmの円軌道として相対性理論の式でSEADICEが計算しました(1日に約25マイクロ秒の遅れ)。光の速さに近い旅の値は、速さによる時間の遅れの式で計算した「もしも」です。人を乗せてそこまで速く飛ぶ方法は、今はありません。

04 まだわかっていないこと過去へ行けるかは、なぜまだわからないの?

過去へ戻る道筋が自然に作れるか、作れても壊れずに残るかは、重力と量子力学をまとめた理論がないと答えられないからです。研究者の意見も分かれています。

05関連する記事

06よくある質問

未来へのタイムトラベルはもう起きている?

起きています。速く動いた時計や重力の弱い場所の時計は、地上の時計とずれます。旅客機で世界1周した原子時計は273ナノ秒進み、GPS衛星の時計は1日に約38マイクロ秒速く進みます。ただし、ずれはごくわずかです。

過去へのタイムトラベルは理論上できる?

相対性理論の式の上では、宇宙全体が回っている場合(ゲーデル、1949年)や、通り抜けられるワームホールを使う場合(1988年)に、過去へ戻る道筋がありうると示されています。ただし、私たちの宇宙で作れるかはわかっていません。ホーキングは1992年に、物理の法則がそれを禁じていると予想しました。

宇宙飛行士は未来に行っている?

ほんの少しだけ行っています。宇宙ステーションの高さでは、地上より時計が1日に約25マイクロ秒遅れます(計算)。半年いると約0.0045秒、地上の人より未来に帰ってくることになります。

時間順序保護仮説とは?

ホーキングが1992年に出した予想で、過去へ戻れる道筋ができかけると量子力学の効果でエネルギーが大きくなり、道筋ができるのを妨げる、というものです。物理の法則が過去への旅を禁じているという考えで、証明されてはいません。

出典

  1. Hafele, J. C., Keating, R. E. (1972). Around-the-World Atomic Clocks: Predicted Relativistic Time Gains. Science 177, 166–168. https://doi.org/10.1126/science.177.4044.166
  2. Hafele, J. C., Keating, R. E. (1972). Around-the-World Atomic Clocks: Observed Relativistic Time Gains. Science 177, 168–170. https://doi.org/10.1126/science.177.4044.168
  3. Bailey, J., et al. (1977). Measurements of relativistic time dilatation for positive and negative muons in a circular orbit. Nature 268, 301–305. https://doi.org/10.1038/268301a0
  4. Ashby, N. (2003). Relativity in the Global Positioning System. Living Reviews in Relativity 6, 1. https://doi.org/10.12942/lrr-2003-1
  5. Gödel, K. (1949). An Example of a New Type of Cosmological Solutions of Einstein's Field Equations of Gravitation. Reviews of Modern Physics 21, 447–450. https://doi.org/10.1103/RevModPhys.21.447
  6. Morris, M. S., Thorne, K. S., Yurtsever, U. (1988). Wormholes, Time Machines, and the Weak Energy Condition. Physical Review Letters 61, 1446–1449. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.61.1446
  7. Friedman, J., Morris, M. S., Novikov, I. D., et al. (1990). Cauchy problem in spacetimes with closed timelike curves. Physical Review D 42, 1915–1930. https://doi.org/10.1103/PhysRevD.42.1915
  8. Hawking, S. W. (1992). Chronology protection conjecture. Physical Review D 46, 603–611. https://doi.org/10.1103/PhysRevD.46.603
  9. Saadeh, D., Feeney, S. M., Pontzen, A., Peiris, H. V., McEwen, J. D. (2016). How Isotropic is the Universe? Physical Review Letters 117, 131302. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.131302