人工衛星は肉眼で見えるのか、スターリンクの列と見分け方

夕方や明け方の空に、星のような点が音もなく、まっすぐ動いていくことがあります。その多くは人工衛星です。2019年からは、光の点が何十個も一列に並んで進む「スターリンクの列」も見られるようになりました。
3行でわかる
- 人工衛星は自分では光らず、太陽の光を反射して光ります。地上が暗く、衛星にはまだ日が当たっている日の入り後と日の出前に、肉眼で見えます。
- 一列に並んだ光は、打ち上げから間もないスターリンク衛星です。低い高さにまとまっていて明るく、数週間かけて高度を上げると散らばって暗くなります。
- 衛星の光は、天文台の写真に線を残します。ある観測所では、夕方・明け方の写真に線が入る割合が、約2年で0.5%未満から18%に増えました。
01 わかっていること人工衛星は肉眼で見えるの?
人工衛星は肉眼で見えます。太陽の光を反射して光るので、地上は暗いのに衛星には日が当たっている、日の入り後と日の出前が見えるときです。最初のスターリンク衛星は、肉眼で見える明るさだと報告されています。
人工衛星は、電灯のように自分で光っているわけではありません。高いところで太陽の光を受け、それを地上へはね返しています [2]。
昼は空が明るすぎて見えません。真夜中は、衛星も地球の影に入ってしまいます。だから見やすいのは、空が暗くなってからの数時間と、夜が明ける前の数時間です [1][2]。
マクダウェル(2020年)の計算では、大きな天文台がある低めの緯度の冬なら、真夜中の約6時間はスターリンク衛星に日が当たりません [1]。いっぽう夏は、一晩中日が当たる衛星もあります [1]。国際宇宙ステーションが見える条件も同じしくみで、国際宇宙ステーションは肉眼で見えるのかで詳しく書いています。
夜空で動く光は、人工衛星だけではありません。次の表で見分けられます。
| 見えたもの | 動き方 | 光り方 |
|---|---|---|
| 人工衛星 | 同じ速さでまっすぐ進み、数分で空を横切る | 多くは同じ明るさのまま進む(回転しているロケットの残骸などは、明るさが変わることもある)。地球の影に入ると途中でふっと消える |
| スターリンクの列 | 同じ道すじを、点が何十個も間をあけて続く | 打ち上げ直後だけの見え方 |
| 飛行機 | 動き方だけでは区別しにくい | 赤や緑の灯りが点滅する。音がすることもある |
| 流れ星 | 一瞬で消える | すっと線を引いて消える |
| 星・惑星 | 数分見ていても、ほとんど動かない | 星はまたたく。惑星はまたたきにくい(惑星の見分け方) |
02 どうやってわかったのかスターリンクの列はなぜできて、観測にどう影響するの?
スターリンクの列は、打ち上げ直後の衛星が低い高さにまとまって並んでいるためにできます。研究者は衛星の明るさを測り、天文台の写真に写った線を数えて、観測への影響を調べてきました。
わかっているタイソンら(2020年、The Astronomical Journal)[2]
2019年5月に60基のスターリンクがまとめて打ち上げられ、列になって肉眼で見えました。打ち上げ後4〜8週間は高さ約380kmにとどまり、そのあと約550kmへ上がります。この間は太陽電池の板と本体が同じ面に並ぶ形のため、何等級も明るく見えることがあります。
どうやって: 衛星の明るさを地上の望遠鏡で測り、建設中のルービン天文台の写真にどう写るかを実験と計算で調べました。最初の型の明るさは緑色の光で約4.5等、黒く塗った試験機は約6.1等でした。
わかっているムローズら(2022年、The Astrophysical Journal Letters)[3]
アメリカの観測装置ZTFの写真に、スターリンクとわかる線が5301本写っていました。夕方・明け方に撮った写真で線が入った割合は、2019年末の0.5%未満から、2021年8月には18%に増えました。
どうやって: 2019年11月から2021年9月までに、広い範囲を一度に写すカメラで撮った写真を調べました。日よけを付けた型の衛星は、元の型の約4.6分の1の明るさでした。ただ、この期間のZTFの研究には、まだ大きな支障は出ていないとしています。
有力な仮説ローラーら(2022年、The Astronomical Journal)[5]
計画中の衛星が合計6万5000基になると、北緯・南緯50度あたりでは、夏至のころは一晩中、肉眼で見える光の点の数%が人工衛星になると予測しました。
どうやって: スターリンクの明るさの観測で合わせた簡単な反射のモデルで、場所・季節・時刻ごとの見え方を計算しました。打ち上げ計画しだいで変わる予測です。
有力な仮説コシファイら(2021年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters)[4]
衛星や宇宙ゴミは、1つ1つが見えなくても、たくさん集まると空全体をうっすら明るくすると報告しました。その明るさは、自然の夜空の約10%増しに達している可能性があります。
どうやって: 地球を回る物体の数と大きさから、はね返される太陽の光の合計を見積もりました。著者ら自身が「予備的な見積もり」としています。10%は、国際天文学連合が1979年に、天文台の場所で超えないようにと定めた光害の限度です。
03 数字と例えでいうと人工衛星はどれくらい速くて、どれくらい明るいの?
高さ550kmを回る衛星は秒速約7.6kmで、約95分で地球を1周します。空を横切る時間は長くても8分ほどです。明るさは4〜6等ほどで、空が暗ければ肉眼で見える範囲です。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 高さ550kmでの速さ | 秒速約7.6km(計算) | 時速約2万7000km。時速300kmの新幹線の約90倍 |
| 地球を1周する時間 | 約95分(計算) | 映画1本を見ている間に地球を1周する |
| 真上を通るとき、高さ10度より上に見える時間 | 最長で約8分(計算) | 3分でできるカップ麺の2〜3個分 |
| 最初の型のスターリンクの明るさ | 緑色の光で約4.5等 [2] | 肉眼の限界は暗い空で6等前後とされ(等級のしくみ)、はっきり見える明るさ |
| 暗くする工夫の効果 | 日よけで約4.6分の1 [3]、黒塗りの試験機は約6.1等 [2] | 4.5等と6.1等の差は約4.4倍(計算) |
| 夕方・明け方の写真に線が入る割合(ZTF) | 0.5%未満 → 18% [3] | 2019年末から2021年8月までの約2年で |
速さと1周の時間は、地球の半径6371kmと地球の重力の強さから円軌道として計算しました。空を横切る時間は、地球の自転を入れない目安です。等級は5違うと明るさが100倍違うので、1.6等の差は約4.4倍になります。
04 まだわかっていないことこれから夜空はどう変わるの?
夜空がどこまで変わるかは、まだわかっていません。何基の衛星が打ち上がり、どこまで暗くできるかで変わるからです。空全体を明るくする効果の大きさも、まだ見積もりの段階です。
- 夜空に見える衛星は、どこまで増えるのか予測は打ち上げ計画しだいです。ローラーらは、反射を大きく減らすか数を減らさない限り、世界中で夜空が大きく変わるとしています [5]。
- 空全体は、実際どれくらい明るくなっているのか自然の夜空の約10%増しという値は、計算による予備的な見積もりです [4]。実際の空で測って確かめるのは、これからの課題です。
- 暗くした衛星なら、観測への影響は消えるのかタイソンらは、7等ほどまで暗くしても望遠鏡の写真には線が残り、一部の研究を制限するおそれがあるとしています [2]。どこまで写真から取り除けるかは、まだ研究が続いています。
05関連する記事
06よくある質問
スターリンクの列は毎晩見えるの?
毎晩ではありません。一列に並んで見えるのは、打ち上げから数週間、衛星が低い高さにまとまっている間だけです。タイソンら(2020年)によると、打ち上げ後4〜8週間は高さ約380kmにとどまり、そのあと約550kmへ上がって散らばり、暗くなります。
人工衛星と飛行機はどう見分けるの?
目安は灯りの色と点滅です。飛行機には赤や緑の点滅する灯りがあります。人工衛星は太陽の光を反射しているだけなので、多くは同じ明るさのまま、同じ速さでまっすぐ進みます。ただ、回転しているロケットの残骸などは明るさが変わることもあるので、点滅だけで決めつけないでください。
真夜中に人工衛星が見えにくいのはなぜ?
人工衛星も地球の影に入り、太陽の光が当たらなくなるからです。マクダウェル(2020年)の計算では、大きな天文台がある低めの緯度の冬には、真夜中の約6時間、スターリンク衛星に日が当たりません。夏は一晩中日が当たる衛星もあります。
人工衛星が急に消えたり、明るくなったりするのはなぜ?
急に消えるのは、地球の影に入って太陽の光が当たらなくなるためです。明るさは、太陽電池の板などがどの向きで太陽の光をはね返すかで変わります。打ち上げ直後のスターリンクは板と本体が同じ面に並ぶ形のため、何等級も明るく見えることがあります。
出典
- McDowell, J. C. (2020). The Low Earth Orbit Satellite Population and Impacts of the SpaceX Starlink Constellation. The Astrophysical Journal Letters 892, L36. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ab8016
- Tyson, J. A., Ivezić, Ž., Bradshaw, A., Rawls, M. L., et al. (2020). Mitigation of LEO Satellite Brightness and Trail Effects on the Rubin Observatory LSST. The Astronomical Journal 160, 226. https://doi.org/10.3847/1538-3881/abba3e
- Mróz, P., Otarola, A., Prince, T. A., Dekany, R., et al. (2022). Impact of the SpaceX Starlink Satellites on the Zwicky Transient Facility Survey Observations. The Astrophysical Journal Letters 924, L30. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac470a
- Kocifaj, M., Kundracik, F., Barentine, J. C., Bará, S. (2021). The proliferation of space objects is a rapidly increasing source of artificial night sky brightness. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters 504, L40–L44. https://doi.org/10.1093/mnrasl/slab030
- Lawler, S. M., Boley, A. C., Rein, H. (2022). Visibility Predictions for Near-future Satellite Megaconstellations: Latitudes near 50° Will Experience the Worst Light Pollution. The Astronomical Journal 163, 21. https://doi.org/10.3847/1538-3881/ac341b


