宇宙ではどうやって食べてトイレをするのか

無重力の宇宙では、パンくず1つ、水1滴もふわふわ浮いてしまいます。では宇宙飛行士は、どうやって食べて、トイレをしているのでしょうか。食事は袋入りの宇宙食、トイレは空気の流れで吸い込むしくみ。そして尿は、きれいな水に戻して飲み水に使われています。
3行でわかる
- 宇宙食は、水を足して戻す食品や加熱殺菌したレトルトなどを袋に入れたもの。塩とこしょうは液体にし、パンの代わりにトルティーヤを使う。
- トイレは重力の代わりに空気の流れで尿と便を吸い込む。便は袋に入れて保管し、多くは補給船ごと大気圏で燃やす。
- ISSでは、尿や汗・吐く息の水分を集めて、水の約98%を再利用できるようになった(NASA、2023年)。
01 わかっていること宇宙ではどうやって食べる?
宇宙飛行士は、袋や容器に入った宇宙食を、はさみで開けて食べます。水を足して戻す食品、加熱殺菌した食品、そのまま食べられる食品などがあり、くずや水滴が飛び散らない工夫がされています。
NASAの資料によると、塩とこしょうはスポイト付きの容器に入った液体です。塩は水に溶かし、こしょうは油に混ぜてあります[3]。粉のままだと浮いて目や機械に入ってしまうからです。
パンの代わりによく食べられるのが、小麦粉のトルティーヤです。くずが出にくく、1985年から使われています[3]。生の果物などは冷蔵できないため、飛行の最初の数日で食べきります。
日本の宇宙飛行士のために、JAXAが認めた「宇宙日本食」もあります。白飯、鮭のおにぎり、サバの味噌煮、ようかん、宇宙用のカップヌードルなどで、JAXAのページには43品目が載っています(2026年10月に確認)[6]。
02 どうやってわかったのか宇宙のトイレと水の再利用はどうなっている?
宇宙のトイレは、重力の代わりに空気の流れで尿と便を体から引き離します。尿は処理して水に戻し、ISSでは水全体の約98%を再利用できるとNASAが2023年に発表しました。
わかっているNASA の新しい宇宙トイレの説明(2020年)[4]
宇宙のトイレは、空気の流れで尿と便を受け口へ引き込みます。尿はじょうごとホースで、便は便座で受け、ふたを開けると自動で空気が流れ始めます。
どうやって: 便は1回ずつ袋に密封し、取り外せる容器に押し込んで保管します。一部は調べるために地球へ戻し、多くは補給船に積んで大気圏で燃やします。新しいトイレは前のものより65%小さく、40%軽く作られました。ISSにはトイレが2つあります[7]。
わかっているNASA の発表(2023年)[5]
ISSの生命維持装置は、水の約98%を回収できるようになりました。それまでは93〜94%でした。
どうやって: 尿は真空の中で蒸留して水を取り出し、残った濃い液からも、膜と温かい乾いた空気でさらに水を取り出します。汗や吐く息の水分は除湿機で集めます。NASAの担当者は「飲んでいるのは尿ではなく、回収してろ過し、きれいにした水」と説明しています。
有力な仮説Taylor ら(2020年、Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety)[1]
ISSの宇宙飛行士は、ふつう1日に必要なカロリーの約80%しか食べていません。宇宙では食べ物の味や香りの感じ方が変わり、それが食べる量を減らしているという考えがあります。
どうやって: これまでの研究や飛行士の報告をまとめた総説です。保存中の味の変化、体の変化、騒音、空気や水の質が、味の感じ方にどう影響するかを検討しました。味の変化が食べる量を減らすという点は、まだ仮説です。
わかっているCooper・Douglas・Perchonok(2011年、Journal of Food Science)[2]
火星へ行くような長い旅では、宇宙食が3〜5年間、おいしさ・栄養・安全を保つ必要があると見積もられています。
どうやって: NASAの食品研究チームが、これまでの研究と残る課題をまとめました。長持ちして栄養の多い食品、重力の小さい場所での調理、軽い包装などが、まだ足りない技術として挙げられています。火星での暮らしの課題は人は火星に住めるのかへ。
03 数字と例えでいうと宇宙の食事とトイレを数字で見ると?
ISSでは水の約98%を再利用でき、100リットルのうち失うのは約2リットルです(計算)。一方で宇宙飛行士は必要なカロリーの約80%しか食べておらず、宇宙食をもっと長持ちさせる研究も続いています。
| 項目 | 値 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| ISSの水の回収率 | 約98%[5] | 2リットルのペットボトル50本分の水から、失うのは1本分(計算) |
| 食べている量 | 必要なカロリーの約80%[1] | 1日2500kcal必要な人なら、約2000kcalしか食べていない(計算) |
| 宇宙日本食の認証に必要な保存試験 | 1.5年間[6] | JAXAの認証手続きのページによる。1.5年の試験が終わる前でも、打上げの時期しだいでISSに積める食品があり、JAXAはそれを「Pre宇宙日本食」と呼ぶ |
| 火星の旅に必要な保存期間 | 3〜5年[2] | 宇宙日本食の保存試験(1.5年)の約2〜3.3倍(計算) |
| 新しい宇宙トイレ | 65%小さく、40%軽い[4] | 前のトイレの約3分の1の大きさ |
04 まだわかっていないこと宇宙の食事とトイレで、まだ謎なのは何?
宇宙飛行士がなぜ食べる量が減るのか、何年も続く火星の旅の食事をどう用意するのか、便から水を取り出すかどうかは、まだ決着していません。
- なぜ宇宙では食べる量が減るのか味や香りの感じ方が変わるという考えが有力ですが、騒音や空気、保存中の味の変化、体の変化(宇宙に長くいると体はどうなるのか)などの影響を分けきれていません[1]。
- 3〜5年もつ宇宙食は作れるのか今の宇宙食のままでは、火星の旅に必要な長さ・軽さ・栄養を満たせないとされ、研究が続いています[2]。
- 便の水も再利用するのか2020年の時点で、ISSでは便から水を取り出していません[4]。水の回収を100%に近づけるには、ほかの水の行き先も含めた工夫が必要です。
05関連する記事
06よくある質問
宇宙飛行士は何を食べているの?
水を足して戻す食品、加熱殺菌したレトルト食品、そのまま食べられる食品などの宇宙食です。塩とこしょうは浮かないよう液体にし、パンの代わりにくずの出にくいトルティーヤを使います。日本の宇宙飛行士向けには、JAXAが認めた宇宙日本食もあります。
宇宙ではどうやってトイレをするの?
重力の代わりに、空気の流れで尿と便を体から引き離して吸い込みます。尿はじょうごとホース、便は便座で受けます。便は袋に密封して容器に保管し、多くは補給船に積んで大気圏で燃やします。
宇宙飛行士は尿を飲んでいるの?
尿をそのまま飲むことはありません。国際宇宙ステーションでは、尿を蒸留・ろ過してきれいな水に戻し、汗や吐く息の水分と合わせて、水の約98%を再利用しています(NASA、2023年)。
宇宙日本食とは?
日本の食品会社などが提案した食品のうち、JAXAの認証基準を満たしたものです。白飯、鮭のおにぎり、サバの味噌煮、ようかん、宇宙用のカップヌードルなどがあり、長い宇宙滞在のストレスを和らげる目的があります。
宇宙では味が変わるの?
宇宙では味や香りの感じ方が変わるという飛行士の報告があります。国際宇宙ステーションの飛行士は必要なカロリーの約80%しか食べておらず、味の変化が原因の1つという考えがありますが、まだ確かめられていません。
出典
- Taylor, A. J., Beauchamp, J. D., Briand, L., Heer, M., et al. (2020). Factors affecting flavor perception in space: Does the spacecraft environment influence food intake by astronauts? Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety 19, 3439–3475. https://doi.org/10.1111/1541-4337.12633
- Cooper, M., Douglas, G., Perchonok, M. (2011). Developing the NASA Food System for Long-Duration Missions. Journal of Food Science 76(2). https://doi.org/10.1111/j.1750-3841.2010.01982.x
- NASA (2006). Space Food(Fact Sheet FS-2006-11-029). https://www.nasa.gov/wp-content/uploads/2015/05/167750main_fs_spacefood508c.pdf
- NASA (2020). Boldly Go! NASA's New Space Toilet Offers More Comfort, Improved Efficiency for Deep Space Missions. https://www.nasa.gov/humans-in-space/boldly-go-nasas-new-space-toilet-offers-more-comfort-improved-efficiency-for-deep-space-missions/
- NASA (2023). NASA Achieves Water Recovery Milestone on International Space Station. https://www.nasa.gov/missions/station/iss-research/nasa-achieves-water-recovery-milestone-on-international-space-station/
- JAXA 有人宇宙技術部門. 宇宙日本食. https://humans-in-space.jaxa.jp/life/food-in-space/japanese-food/ / 宇宙日本食の認証手続き. https://humans-in-space.jaxa.jp/biz-lab/med-in-space/healthcare/food/procedure/
- NASA. Space Station Facts and Figures. https://www.nasa.gov/international-space-station/space-station-facts-and-figures/


