海王星は計算で見つかった、ルヴェリエとアダムズの物語

海王星は、望遠鏡で偶然見つかったのではありません。天王星の動きの小さなずれから「見えない惑星がある」と計算し、その場所に望遠鏡を向けて見つかりました。1846年9月23日、ベルリン天文台のガレは、予言された場所から1度もずれていない所で、地図にない星を見つけました。
3行でわかる
- 天王星は計算どおりに動かなかった。フランスのルヴェリエは、外側にある未知の惑星が引っぱっていると考え、その位置を計算した。
- ベルリンのガレは、ルヴェリエの手紙が届いたその夜に、予言から約52分角(1度未満)の場所で海王星を見つけた。
- 英国のアダムズも計算していたと、発見の後に英国側が主張した。どこまでを「予言」と認めるかは、今も科学史の研究で見直されている。
01 わかっていること海王星はどうやって見つかったの?
海王星は、計算で場所を予言してから見つかった惑星です。ルヴェリエが天王星の動きのずれから位置を計算し、1846年9月23日、ベルリン天文台のガレと助手のダレストが、その近くで見つけました。
天王星は1781年に見つかった惑星です。ルヴェリエが木星と土星に引っぱられる分を計算し直しても、観測とのずれは観測の誤差より大きく残りました[1]。重力の法則そのものを疑う声もありました。
ルヴェリエは、法則を疑うのは最後の手段だと考えました。代わりに、外側にまだ知られていない惑星があって天王星を引っぱっている、と仮定して計算を進めました[1]。
パリのルヴェリエは、1846年8月31日の科学アカデミーで、その惑星の軌道と重さを発表しました。9月18日にはベルリン天文台のガレに手紙を書き、探してほしいと頼みました[1]。
ガレは手紙が届いた日の夜に探し始め、ベルリン科学アカデミーの星図「Hora XXI」にない8等級の星を見つけました。次の夜の観測で、それが探していた惑星だと確かめられました[1][3]。
02 どうやってわかったのか予言はどれくらい当たっていた?
見つかった場所は、予言から約52分角しかずれていませんでした。1度より小さいずれです。ただし、予言した軌道の大きさは実際より2割ほど大きいものでした。
わかっているLaskar(2017年、Comptes Rendus Physique)[1]
ルヴェリエが予言した位置(太陽から見た方向)は326度32分、観測された位置は327度24分でした。差は52分角で、ルヴェリエ自身も「1度以内で予言できていた」と書いています。計算の手書きのノートは約1300ページあり、すべてルヴェリエ1人の字とみられます。
どうやって: パリ天文台の天文学者が、ルヴェリエが科学アカデミーの報告集に出した論文と、ガレの手紙を読み直しました。「大勢の計算係がいた」といううわさは、この発見については誤りだとしています。
わかっているライプニッツ天体物理学研究所(AIP、ベルリン天文台の流れをくむ研究所)[3]
ガレとダレストが使った星図「Hora XXI」は、1826年に作り始め、1844年に完成し、1845年に印刷されたばかりのものでした。新しい星図があったので、地図にない星をすぐに見分けられました。
どうやって: 研究所が持つ実物の星図の記録です。星図には予言の位置と見つかった位置が鉛筆で書き込まれていますが、発見の夜ではなく後から書かれたとされています。
わかっているKollerstrom(2006年、Journal of Astronomical History and Heritage)[2]
英国ケンブリッジ天文台のチャリスも、6週間かけて同じ惑星を探していました。実は8月4日と12日に海王星を記録していましたが、たくさんの星の1つとして書き留めただけで、惑星だと気づきませんでした。ガレたちは30分ほどで見つけています。
どうやって: 科学史の研究者が、ジョン・ハーシェルが書いた手紙を英国王立協会などの保管庫から書き起こし、当時のやりとりを読み直しました。
03 数字と例えでいうと予言と本物の海王星はどれくらい違う?
方向はよく合っていましたが、軌道の大きさと1周の時間は外れていました。予言は太陽から約36天文単位・1周約217年、本物は約30天文単位・約165年です。
| 項目 | ルヴェリエの予言(1846年8月) | 本物の海王星 |
|---|---|---|
| 太陽からの平均の距離 | 36.154天文単位[1] | 約30.07天文単位[5](太陽と地球の距離の約30倍) |
| 太陽のまわりを1周する時間 | 約217年[1] | 約164.8年[5] |
| 太陽から見た方向 | 326度32分[1] | 327度24分(差は52分角)[1] |
| 明るさ | 望遠鏡で円盤に見えると予想[1] | いちばん明るいときで7.67等[5]。肉眼では見えない |
軌道が違うのに方向が合った理由を、ジョン・ハーシェルはこう考えました。天王星を最も強く引っぱるのは、2つの惑星が近づいた1820年ごろです。予言の惑星は、その時期の本物の動きをよくまねていました[2]。米国の数学者パースは「幸運な偶然」と呼びましたが、ハーシェルはそれに反論しています[2]。
等級(星の明るさの段階)の数え方は1等星と6等星の記事に、海王星が青く見える理由は天王星と海王星の記事にあります。
04 まだわかっていないことアダムズも海王星を予言していたの?
アダムズも計算していましたが、どこまでを「予言」と認めるかは決着していません。英国側の主張は発見の後に出たもので、当時の書類が21世紀に見つかってからも、科学史の研究で見直しが続いています。
- アダムズの「共同予言」はどこまで認められるかケンブリッジの数学者アダムズは、1846年11月13日に王立天文学会で自分の計算を発表しました[2]。英国の天文学者は発見の後でアダムズの手柄を主張しました。王立グリニッジ天文台から長く行方不明だった関係書類はチリで見つかり、それをもとに当時の計算と観測を読み直す研究が進んでいます[4]。1847年、王立天文学会は意見がまとまらず、その年のメダルを誰にも贈りませんでした[2]。
- 海王星の外にも、計算でしか見えない惑星はあるか2016年、バティギンとブラウンは、遠くの小さな天体の軌道が偶然とは思えない向きにそろっていると発表しました。偶然そろう確率は0.007%で、地球の約10倍以上の重さの惑星が引っぱっていれば説明できるとしています[6]。この「第9惑星」はまだ見つかっていません。
05関連する記事
06よくある質問
海王星は誰が見つけたの?
1846年9月23日、ベルリン天文台のガレが、助手のダレストと一緒に望遠鏡で見つけました。見る場所を計算で予言したのは、パリのルヴェリエです。ガレはルヴェリエの手紙が届いたその夜に探し、星図にない8等級の星を見つけました。
海王星の予言はどれくらい正確だった?
見つかった位置は、ルヴェリエの予言から約52分角(1度未満)しかずれていませんでした。ただし予言した軌道の大きさは約36天文単位で、本物の約30天文単位より2割ほど大きく、1周の時間も約217年と本物の約165年より長いものでした。
アダムズも海王星を予言していたの?
ケンブリッジのアダムズも天王星のずれから計算していて、1846年11月13日に王立天文学会で発表しました。ただし英国側がアダムズの手柄を主張したのは発見の後です。どこまでを予言と認めるかは当時も意見が割れ、21世紀に書類が見つかってからも科学史の研究で見直しが続いています。
海王星は肉眼で見える?
見えません。いちばん明るいときでも7.67等で、肉眼で見える6等より暗いからです。双眼鏡か望遠鏡が必要です。
出典
- Laskar, J. (2017). Des premiers travaux de Le Verrier à la découverte de Neptune. Comptes Rendus Physique 18(9–10), 504–519. https://doi.org/10.1016/j.crhy.2017.10.011
- Kollerstrom, N. (2006). John Herschel on the Discovery of Neptune. Journal of Astronomical History and Heritage 9(2), 151–158. https://doi.org/10.3724/sp.j.1440-2807.2006.02.03
- Leibniz-Institut für Astrophysik Potsdam (AIP) (2021). 175th anniversary of the discovery of Neptune. https://aip.de/en/news/175th-anniversary-of-the-discovery-of-neptune
- Kollerstrom, N. (2003). Recovering the Neptune files. Astronomy & Geophysics 44(5), 5.23–5.24. https://doi.org/10.1046/j.1468-4004.2003.44523.x
- NASA NSSDC. Neptune Fact Sheet(軌道長半径30.07天文単位・公転周期60,189日・最大等級7.67). https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet/neptunefact.html
- Batygin, K., Brown, M. E. (2016). Evidence for a Distant Giant Planet in the Solar System. The Astronomical Journal 151, 22. https://doi.org/10.3847/0004-6256/151/2/22


