宇宙の始まりと終わり

もしダークエネルギーがなかったら宇宙はどうなっていたか

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ハッブル宇宙望遠鏡が写した遠くの銀河
Photo: NASA, ESA, G. Illingworth, D. Magee, and P. Oesch (University of California, San / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

宇宙の中身の約7割は、正体のわからないダークエネルギーです。もしそれがなかったら、星や銀河は生まれなかったのでしょうか。コンピューターの中に「ダークエネルギーのない宇宙」を作って比べた研究では、星の量はほとんど変わりませんでした。大きく変わるのは、これからの未来です。

3行でわかる

  1. ダークエネルギーのない宇宙をシミュレーションで作ると、今までにできた星の量は約15%多くなるだけで、銀河の性質もほとんど見分けがつきませんでした。
  2. 大きく変わるのは未来です。膨張は加速せず遅くなり続け、遠くの銀河が見えなくなっていく未来も起きない計算です。
  3. 逆に、ダークエネルギーが今よりけた違いに強ければ、銀河ができにくくなります。なぜ今の量なのかは、わかっていません。

01 わかっていることダークエネルギーがなかったら、星や銀河はできなかった?

できたと考えられています。宇宙で星がいちばん盛んに生まれたのは誕生から約35億年後で、ダークエネルギーの影響が目立ち始める前でした。そのため、なくても星の量はあまり変わらないという計算結果が出ています。

ダークエネルギーは、宇宙の膨張を加速させているもののことです。見つかった経緯はダークエネルギーとは何かで説明しています。

ダークエネルギーの濃さは、宇宙が広がっても薄まらないと考えられています。物質は広がるほど薄まります。だから昔の宇宙では物質が主役で、ダークエネルギーが効いてきたのは最近の数十億年です。

この「もしも」は、実際の宇宙では確かめられません。ここで書くのは、ダークエネルギーだけを取り除いた宇宙を、計算とシミュレーションで作った研究の結果です。

02 どうやってわかったのか「ない宇宙」をどうやって調べたの?

まず超新星の観測で、ダークエネルギーのない宇宙では今の観測が説明できないことが示されました。そのうえで、ダークエネルギーだけを取り除いた宇宙をスーパーコンピューターで作り、私たちの宇宙と比べています。

わかっているリースら(1998年、The Astronomical Journal)[1]

遠くのIa型超新星は、ダークエネルギーのない宇宙で予想されるより、平均で10〜15%遠くにありました。どの分析方法でも、膨張が加速している宇宙が選ばれました。

どうやって: 明るさのそろった超新星16個(遠い)と34個(近い)の見かけの明るさから距離を求め、宇宙の中身ごとの予想と比べました。

わかっているパールマッターら(1999年、The Astrophysical Journal)[2]

別のチームが42個の超新星で調べ、ダークエネルギー(宇宙定数)がプラスである確率を99%と求めました。ダークエネルギーのない平らな宇宙とは、データが強く食い違いました。

どうやって: 赤方偏移0.18〜0.83の超新星と近くの超新星を合わせて分析しました。物質だけで開いた宇宙も、データとよく合いませんでした。

有力な仮説サルシードら(2018年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[3]

ダークエネルギーのない宇宙では、今までにできた星の量は約15%多いだけでした。私たちの宇宙では、これから生まれる星も含めた全部のうち約88%が、すでにできていると見積もっています。

どうやって: 銀河のでき方をよく再現する「EAGLE」というシミュレーションで、私たちの宇宙と、ダークエネルギーだけを取り除いて初めの状態をそろえた宇宙を比べました。巨大ブラックホールの働きのほうが、星の量への影響ははるかに大きい(なければ今の星づくりは約2.5倍)とわかりました。

有力な仮説バーンズら(2018年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[4]

ダークエネルギーの強さを0から今の300倍まで変えた宇宙を作りました。今の10倍にしても、星のでき方への影響は小さいものでした。

どうやって: 同じEAGLEのシミュレーションで、強さだけを変えて比べました。星づくりのピークが加速の始まる前にあるため、強さを変えても差が出にくいとしています。

有力な仮説ワインバーグ(1987年、Physical Review Letters)[5]

宇宙が縮まない場合、ダークエネルギーの強さの上限は「重力でまとまった天体ができなくなるほど大きくない」ことだけだ、と論じました。強すぎれば、銀河のようなまとまりができません。

どうやって: 理論の計算です。観測者がいる宇宙なら、ダークエネルギーはこの上限より小さいはずだ、という考え方(人間原理)を使っています。

有力な仮説ローブ(2002年、Physical Review D)[6]

ダークエネルギーで膨張が加速し続けると、遠くの銀河の光はいつか届かなくなります。今、赤方偏移5〜10に見える銀河は、その銀河が40億〜60億歳になったころの姿までしか見えないと計算しました。

どうやって: ダークエネルギーが今のまま変わらないと仮定して、光の届き方を計算しました。ダークエネルギーがなければ、この「見えなくなる」理由そのものがなくなります。

03 数字と例えでいうとある宇宙と、ない宇宙で、何がどれだけ違うの?

今までの星の量の差は約15%と小さく、差が大きくなるのは未来です。宇宙が200億歳のとき、私たちの宇宙は「ない宇宙」より約25%大きく、膨張の速さは約50%速いと計算されています。

項目私たちの宇宙と「ない宇宙」の違い身近な例えでいうと
今までにできた星の量ない宇宙のほうが約15%多い [3]100個のところが115個。銀河の性質はほぼ同じ
銀河のもとの育つ速さ138億歳で約20%、200億歳で約40%の差 [3]差は時間がたつほど開く
200億歳のときの宇宙私たちの宇宙が約25%大きく、膨張は約50%速い [3]同じ年に生まれた風船の、大きさの差が開いていく
超新星までの距離ない宇宙の予想より10〜15%遠かった [1]100mと思った的が110〜115m先にあった
宇宙の年齢今の膨張の速さ(秒速67.4km/メガパーセク)[7]のまま取り除くと約97億年(計算)実際の138億年より約40億年若くなり、計算が合わなくなる

最後の行は、今の膨張の速さをそのまま使い、中身が物質だけの平らな宇宙と仮定した計算です。ワインバーグも1987年の論文で、ダークエネルギーがあれば宇宙の「年齢の問題」が和らぐと書いていました。宇宙の年齢の測り方は宇宙の年齢138億年はどうやって測ったのかで説明しています。

04 まだわかっていないことこの「もしも」で答えが出ていないのは?

いちばんの謎は、なぜダークエネルギーが今の量なのかです。人間原理で説明しようとする研究もありますが、シミュレーションでは星の量への影響が小さすぎて、量を決める理由になりにくいことがわかってきました。

05関連する記事

06よくある質問

ダークエネルギーがなかったら、宇宙は縮んでいた?

中身がちょうど平らな宇宙になる量の物質だけなら、膨張は遅くなりながらも止まらず、縮みません。サルシードらのシミュレーションの「ない宇宙」もこの形です。物質がそれより多ければ、いつか縮む可能性があります。

ダークエネルギーがなくても、銀河は今と同じ形だった?

サルシードらのシミュレーションでは、ダークエネルギーのある宇宙とない宇宙で、今の銀河の性質はほとんど見分けがつきませんでした。星の量への影響は、巨大ブラックホールの働きのほうがずっと大きいとされています。

ダークエネルギーが強すぎたら、どうなる?

ワインバーグの1987年の計算では、強すぎると重力で天体がまとまる前に宇宙が広がってしまい、銀河ができなくなります。バーンズらのシミュレーションでは、今の10倍程度なら星のでき方への影響は小さいとされました。

出典

  1. Riess, A. G. et al. (1998). Observational Evidence from Supernovae for an Accelerating Universe and a Cosmological Constant. The Astronomical Journal 116, 1009-1038. https://doi.org/10.1086/300499
  2. Perlmutter, S. et al. (1999). Measurements of Ω and Λ from 42 High-Redshift Supernovae. The Astrophysical Journal 517, 565-586. https://doi.org/10.1086/307221
  3. Salcido, J. et al. (2018). The impact of dark energy on galaxy formation. What does the future of our Universe hold? Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 477, 3744-3759. https://doi.org/10.1093/mnras/sty879
  4. Barnes, L. A. et al. (2018). Galaxy formation efficiency and the multiverse explanation of the cosmological constant with EAGLE simulations. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 477, 3727-3743. https://doi.org/10.1093/mnras/sty846
  5. Weinberg, S. (1987). Anthropic Bound on the Cosmological Constant. Physical Review Letters 59, 2607-2610. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.59.2607
  6. Loeb, A. (2002). Long-term future of extragalactic astronomy. Physical Review D 65, 047301. https://doi.org/10.1103/PhysRevD.65.047301
  7. Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
  8. DESI Collaboration, Adame, A. G. et al. (2025). DESI 2024 VI: cosmological constraints from the measurements of baryon acoustic oscillations. Journal of Cosmology and Astroparticle Physics 2025(02), 021. https://doi.org/10.1088/1475-7516/2025/02/021