太陽のコロナはなぜ100万度なのか、表面より熱いなぞ

太陽の表面の温度は約5800度です。ところが、その外側に広がる薄いガスの層「コロナ」は、100万度を超えています。たき火から離れるほど熱くなるような、ふしぎな話です。なぜそうなるのかは「コロナ加熱問題」と呼ばれ、80年以上たった今も解けていません。
3行でわかる
- コロナが100万度以上あることは、1940年前後にわかり、今は観測でほぼ確かめられている。表面(約5800度)の約170倍以上。
- 熱を運ぶしくみは、磁力線をゆらす「波」と、無数の「小さな爆発(ナノフレア)」の2つの説が有力。どちらも観測の手がかりがある。
- NASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブが2021年に初めてコロナの中に入り、手がかりを集めている。決着はまだついていない。
01 わかっていること太陽のコロナは本当に100万度もある?
太陽のコロナは100万度を超えます。表面の約5800度より百倍以上も熱いことは、コロナの光の色の分析から1940年前後にわかり、今では観測でほぼ確かめられています。
コロナは、皆既日食のとき太陽のまわりに白く広がって見えるガスです。1869年の日食で、コロナの光の中に、どの元素のものかわからない緑色の光が見つかりました[1][2]。
1939〜1942年ごろ、この光は新しい元素ではなく、電子を何個もはぎ取られた鉄などが出す光だとわかりました[2]。電子をそこまではぎ取るには、とても高い温度が必要です。1941年には物理学者アルベーンが、コロナがとても高温であることを、いくつもの証拠から結論づけました[1]。
表面の温度は、国際天文学連合(IAU)の決めた値で5772K(約5500℃)です[3]。コロナが100万度なら、その約170倍になります(計算)。
02 どうやってわかったのかコロナを熱しているのは何だと考えられている?
有力なのは2つの説です。表面の動きで磁力線がゆれて「波」が熱を運ぶ説と、もつれた磁力線が無数の「小さな爆発(ナノフレア)」で熱を出す説です。
どちらの説も、熱のもとは太陽の表面のガスのうずまく動きだと考えます。違いは、そのエネルギーを波として運ぶか、磁力線にためてから一気に出すかです[2]。
有力な仮説Parker(1988年、The Astrophysical Journal)[4]
表面の動きで磁力線がねじれ、もつれた所で小さな爆発が次々に起きて、コロナを熱しているという説です。パーカーはこの小さな爆発を「ナノフレア」と名づけました。
どうやって: 紫外線やX線の観測で、小さな磁場の領域がぱっぱっと光っては消える様子をもとに考えました。1回1回のナノフレアは小さすぎて、今の望遠鏡では1つずつ見分けにくいのが弱点です。
有力な仮説De Pontieuら(2007年、Science)[5]
日本の太陽観測衛星「ひので」で、表面とコロナの間の層が、秒速10〜25キロメートルでゆれる波(アルベーン波)で満たされていることを見つけました。この波は、静かな場所のコロナを熱せるほどのエネルギーを運べる可能性があります。
どうやって: 「ひので」の可視光の望遠鏡で、細かい構造が100〜500秒の周期で左右にゆれる様子を撮り、運ぶエネルギーを見積もりました。
わかっていないTomczykら(2007年、Science)[6]
コロナの中にも、上へ向かって伝わる波がどこにでもあることを見つけました。ただし、見分けられた波だけでは弱すぎて、コロナを熱しきれませんでした。
どうやって: 地上の望遠鏡で、コロナの中の鉄が出す光の動きを測りました。見分けられないほど細かい波が足りない分を運んでいるかもしれない、と著者らは書いています。
わかっているKasperら(2021年、Physical Review Letters)[7]
パーカー・ソーラー・プローブは2021年4月28日、表面から約1300万キロメートルの所で、初めてコロナの中に入りました。中にいたのは約5時間です。
どうやって: 探査機のまわりの太陽の風の速さと磁場を測り、磁場の力がガスより強い「コロナの中」に入ったことを確かめました。NASAは、太陽の風の中のジグザグの磁場(スイッチバック)が表面近くで生まれていることもわかり、こうした発見がコロナの熱のなぞを解く助けになりうると発表しています[8]。
03 数字と例えでいうとどれくらい熱くて、探査機はどこまで近づいた?
コロナの温度は表面の約170倍以上です。パーカー・ソーラー・プローブは2024年12月24日、表面から約610万キロメートルまで近づき、時速約69万キロメートルで飛びました。
| 項目 | 数字 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 太陽の表面の温度 | 5772K(約5500℃)[3] | ここを基準に比べる |
| コロナの温度 | 100万度以上[1][2] | 表面の約170倍以上(計算) |
| コロナを保つのに要るエネルギー | 太陽が光で出すエネルギーの約10万分の1[1] | ほんの少しのエネルギーが、うまく運ばれれば足りる |
| 初めてコロナに入った位置(2021年) | 表面から約1300万km[7] | 太陽の半径の約19倍の高さ(計算) |
| いちばん近づいた距離(2024年) | 表面から約610万km[9] | 太陽と地球の距離の約25分の1(計算) |
| そのときの速さ | 時速約69万km[9] | 秒速約190km。東京から大阪(約400km)を約2秒(計算) |
温度の「約170倍」は100万度を5772Kで割った数です。距離の例えは、太陽の半径を約70万km、太陽と地球の距離を約1億5000万kmとして計算しました。
04 まだわかっていないことコロナ加熱問題は、なぜまだ解けない?
波とナノフレアのどちらが主役なのか、場所によって違うのかは、まだわかっていません。熱が生まれる場所が細かすぎて、今の望遠鏡では直接見分けられないことが大きな理由です。
- 波とナノフレア、どちらが主役かコロナではいくつものしくみが同時に働いているはずで、本当の問題はどれが主役かだ、とKlimchukはまとめています[2]。黒点のある活発な場所と静かな場所で、しくみが違うのかもまだ答えが出ていません。
- ナノフレアは本当に無数に起きているのか1つずつが小さすぎて、数えきれていません。望遠鏡で見えない細かい磁力線の中で起きていると考えられています[2][4]。
- スイッチバックはどうやってできるのか表面近くで生まれることはわかってきましたが、波でできるのか、磁力線のつなぎ変わりでできるのか、まだ決まっていません[8]。
05関連する記事
06よくある質問
太陽のコロナは何度?
100万度を超えます。表面の温度は約5800度(5772K)なので、その約170倍以上です。コロナの光に含まれる、電子を何個もはぎ取られた鉄の光の分析から、1940年前後にわかりました。
なぜ表面より外側のコロナのほうが熱いの?
まだはっきりわかっていません。有力なのは、表面の動きで磁力線がゆれて波が熱を運ぶ説と、もつれた磁力線で小さな爆発(ナノフレア)が無数に起きる説です。どちらにも観測の手がかりがあり、決着していません。
パーカー・ソーラー・プローブは何をしているの?
NASAの太陽探査機で、2021年4月28日に初めてコロナの中に入りました。2024年12月24日には表面から約610万キロメートルまで近づき、時速約69万キロメートルで飛びました。コロナの中の磁場や太陽の風を直接測り、熱のなぞの手がかりを集めています。
ナノフレアとは?
太陽の表面で磁力線がねじれてもつれた所で起きると考えられている、ごく小さな爆発です。1988年に物理学者パーカーが名づけました。1つずつは小さすぎて、今の望遠鏡ではまだ1つずつ見分けられていません。
出典
- Peter, H., Dwivedi, B. N. (2014). Discovery of the Sun's million-degree hot corona. Frontiers in Astronomy and Space Sciences 1, 2. https://doi.org/10.3389/fspas.2014.00002
- Klimchuk, J. A. (2006). On Solving the Coronal Heating Problem. Solar Physics 234, 41–77. https://doi.org/10.1007/s11207-006-0055-z
- Prša, A., Harmanec, P., Torres, G., Mamajek, E., Asplund, M., Capitaine, N., ほか (2016). Nominal values for selected solar and planetary quantities: IAU 2015 Resolution B3. The Astronomical Journal 152, 41. https://doi.org/10.3847/0004-6256/152/2/41
- Parker, E. N. (1988). Nanoflares and the solar X-ray corona. The Astrophysical Journal 330, 474–479. https://doi.org/10.1086/166485
- De Pontieu, B., McIntosh, S. W., Carlsson, M., Hansteen, V. H., Tarbell, T. D., Schrijver, C. J., ほか (2007). Chromospheric Alfvénic Waves Strong Enough to Power the Solar Wind. Science 318, 1574–1577. https://doi.org/10.1126/science.1151747
- Tomczyk, S., McIntosh, S. W., Keil, S. L., Judge, P. G., Schad, T., Seeley, D. H., Edmondson, J. (2007). Alfvén Waves in the Solar Corona. Science 317, 1192–1196. https://doi.org/10.1126/science.1143304
- Kasper, J. C., Klein, K. G., Lichko, E., Huang, J., Chen, C. H. K., Badman, S. T., ほか (2021). Parker Solar Probe Enters the Magnetically Dominated Solar Corona. Physical Review Letters 127, 255101. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.127.255101
- NASA (2021). NASA Enters the Solar Atmosphere for the First Time, Bringing New Discoveries. https://www.nasa.gov/solar-system/nasa-enters-the-solar-atmosphere-for-the-first-time-bringing-new-discoveries/
- NASA Science (2024年12月27日). NASA's Parker Solar Probe Makes History With Closest Pass to Sun. https://science.nasa.gov/science-research/heliophysics/nasas-parker-solar-probe-makes-history-with-closest-pass-to-sun/


