宇宙探査

宇宙で爆発音は聞こえるのか、映画の宇宙で音がするのはなぜ

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国際宇宙ステーションの外で船外活動をする宇宙飛行士
Photo: NASA Johnson Space Center / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

SF映画では、宇宙船の爆発に「ドーン」という音がよく付いています。では本物の宇宙で、爆発の音は聞こえるのでしょうか。答えは「ほとんど何もない空間では、音は伝わらない」です。ただし、宇宙のどこでも音がないわけではありません。

3行でわかる

  1. 音は、空気などの粒が押し合って伝わる波。粒がほとんどない宇宙空間では、遠くの爆発の音は耳に届かない。
  2. それでも、ガスがあれば音は伝わる。火星の薄い空気では音速が秒速約240m、銀河団のガスの中には「ドより57オクターブ低い」音の波がある。
  3. 宇宙服や宇宙船の壁のような固い物を通る振動は伝わる。宇宙船の中は、換気の機械などで実はかなりうるさい。

01 わかっていること宇宙で爆発しても音は聞こえない?

宇宙空間で起きた爆発の音は、離れた場所では聞こえません。音を運ぶ空気のような粒が、宇宙空間にはほとんどないからです。NASAのチャンドラX線観測所のチームも、宇宙の大部分は音を伝えるものがない真空に近いと説明しています。

音の正体は、空気の粒が次々に押し合って伝わる振動です。地上で音が聞こえるのは、耳までの間に空気がぎっしりあるからです。

宇宙空間にも粒はゼロではありません。でも、とても薄いので、私たちが聞くような音を耳まで運ぶことはできません[3]。宇宙がどれくらい薄いかは宇宙はどれくらいスカスカなのかで数字を見られます。

映画で爆発に音が付いているのは、迫力や分かりやすさのための作り手の演出です。物理の説明として描いているわけではありません。

02 どうやってわかったのか宇宙で音が伝わる場所はある?

あります。ガスや空気がある場所なら、薄くても音は伝わります。火星では探査車のマイクが実際に音を録り、遠い銀河団ではガスの中を伝わる音の波がX線で見つかっています。

わかっているMaurice ら(2022年、Nature)[2]

火星の探査車パーサヴィアランスのマイクで、火星の音を初めてくわしく調べました。火星の音の速さは、240ヘルツより低い音と高い音で、秒速約10m違っていました。

どうやって: 小型ヘリコプター「インジェニュイティ」の羽音や、レーザーで岩を打つ音をマイクで録り、届くまでの時間を測りました。NASAによると、火星の音速は低い音で秒速約240m、高い音で約250m。地球の空気の約343mより遅くなります[4]。

わかっているFabian ら(2003年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[1]

約2億5000万光年先のペルセウス座銀河団の熱いガスに、さざ波のような模様が見つかりました。中心のブラックホールが作る音の波と考えられています。

どうやって: チャンドラX線観測所で約20万秒かけて撮り、ガスの濃さのわずかな波を見つけました。NASAの発表では、その高さは「ピアノの真ん中のドより57オクターブ低いシのフラット」で、人に聞こえる限界より1000兆倍以上低い音です[3]。くわしくはブラックホールの「音」とは何かへ。

わかっているNASA の音の基準の資料(NASA-STD-3001)[5]

宇宙船の中は静かではありません。スペースシャトルの実験室スペースラブでは、音の大きさが1日の平均で68デシベル、日によって75.5デシベル、運動器具を使う間は84デシベルまで上がりました。

どうやって: 1991年のSTS-40の飛行中に測りました。資料によると、その結果、地上との通信や乗組員どうしの会話に深刻な問題が起き、乗組員は話すために実験装置から離れたエアロックへ移る必要がありました。同じ飛行では、1日の平均が71〜75.5デシベルに達した騒音のせいで、乗組員がいらだち、頭痛を訴えたとも記録されています。中は空気で満たされているので、機械の音がそのまま伝わります。

わかっているNASA の説明(ナショナルジオグラフィック 2015年の記事)[6]

2015年の船外活動で、宇宙飛行士の体に付けたカメラの映像には「ブーン」「カチャカチャ」という音が入っていました。NASAは、宇宙服の送風機の音が、服とカメラの台を振動として伝わったと説明しました。

どうやって: テリー・バーツ飛行士の宇宙服に固定したカメラで撮りました。真空を通ったのではなく、固い物を通った振動です。

03 数字と例えでいうと場所によって音はどう変わる?

音の速さや聞こえ方は、間にある物で決まります。地球の空気では秒速約343m、火星では約240m、ほとんど何もない宇宙空間では、耳に届く音はありません。

場所音はどうなる身近な例えでいうと
地球の空気秒速約343m[4]1秒で東京タワー(333m)の高さより少し長い距離
火星の薄い空気低い音で秒速約240m、高い音で約250m[4]地球の約7割の速さ。高い音ほど遠くまで届きにくい[2][4]
宇宙空間(星と星の間)耳に届く音はない粒が薄すぎて、押し合って振動を運べない
銀河団の熱いガスドより57オクターブ低い音の波[3]2の57乗(約14京)分の1の低さ。人の耳ではまったく聞こえない
宇宙船の中1日の平均68デシベル、日によって75.5デシベルの例[5]話すために、乗組員が別の場所(エアロック)へ移るほど

「約7割」は240÷343、「約14京分の1」は2を57回かけた数(約1.4×10の17乗)で計算しました。

04 まだわかっていないこと宇宙の音で、まだ謎なのは何?

銀河団の音の波がガスをどれだけ温めているか、船外で宇宙服ごしに何がどこまで聞こえるかは、まだはっきりしていません。

05関連する記事

06よくある質問

宇宙で爆発したら音は聞こえる?

離れた場所では聞こえません。音は空気などの粒が押し合って伝わる振動で、宇宙空間には粒がほとんどないためです。宇宙船の壁や宇宙服のような固い物を通る振動なら伝わります。

映画の宇宙はなぜ音がするの?

場面の迫力や分かりやすさのための、作り手の演出です。物理の説明として描いているわけではありません。本物の宇宙空間では、遠くの爆発の音は耳に届きません。

火星では音が聞こえる?

聞こえます。火星には薄い空気があり、探査車パーサヴィアランスのマイクが風や小型ヘリコプターの音を録りました。音速は低い音で秒速約240mと、地球の約343mより遅くなります。

宇宙船の中は静か?

静かではありません。換気の送風機や運動の機械が鳴り続けています。1991年のスペースシャトルの実験室では、1日の平均で68デシベル、日によっては75.5デシベルまで上がり、乗組員は話すために実験装置から離れたエアロックへ移る必要がありました。

宇宙飛行士は船外活動中に何が聞こえる?

宇宙服の中の送風機やポンプの音、無線の声が聞こえます。2015年の船外活動の映像では、宇宙服の送風機の音が服とカメラを振動として伝わっていたとNASAが説明しました。

出典

  1. Fabian, A. C., Sanders, J. S., Allen, S. W., Crawford, C. S., et al. (2003). A deep Chandra observation of the Perseus cluster: shocks and ripples. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 344, L43–L47. https://doi.org/10.1046/j.1365-8711.2003.06902.x
  2. Maurice, S., Chide, B., Murdoch, N., Lorenz, R. D., et al. (2022). In situ recording of Mars soundscape. Nature 605, 653–658. https://doi.org/10.1038/s41586-022-04679-0
  3. Chandra X-ray Observatory (2003). Chandra "Hears" A Black Hole For The First Time. https://chandra.harvard.edu/press/03_releases/press_090903.html / A Universe of Sound: Perseus. https://chandra.harvard.edu/sound/perseus.html
  4. NASA JPL (2022). What Sounds Captured by NASA's Perseverance Rover Reveal About Mars. https://www.jpl.nasa.gov/news/what-sounds-captured-by-nasas-perseverance-rover-reveal-about-mars/
  5. NASA Office of the Chief Health and Medical Officer. NASA-STD-3001 Technical Brief: Acoustics. https://www.nasa.gov/wp-content/uploads/2023/12/ochmo-tb-035-acoustics.pdf
  6. National Geographic (2015). A Behind-the-Scenes Look at That Amazing GoPro Footage From Space. https://www.nationalgeographic.com/science/article/a-behind-the-scenes-look-at-that-amazing-gopro-footage-from-space