太陽系の外から来た天体オウムアムアは何だったのか

2017年10月、太陽系の外から来た天体が初めて見つかりました。ハワイ語で「遠くから最初に来た使者」を意味するオウムアムアです。細長い(または平たい)形で、彗星のようなガスの尾が見えないのに、太陽の重力だけでは説明できない加速をしていました。正体は今も決着していませんが、研究者の多くは自然の天体だと考えています。
3行でわかる
- オウムアムアは太陽系の外から来たと確かめられた最初の天体。太陽の重力から逃げる軌道で、二度と戻ってこない。
- ガスやちりは見つからないのに、太陽から押されるような加速が測られた。水素や窒素の氷が出すガス、太陽の光の圧力など、説が対立している。
- その後見つかった2I/ボリソフと3I/ATLASは、どちらもちりの雲をまとった彗星だった。宇宙人の宇宙船という説もあったが、研究者の主流ではない。
01 わかっていることオウムアムアはどこから来た何だった?
オウムアムアは、太陽系の外から来て太陽のそばを通り抜けた、長さ数百m以下の小さな天体です。赤っぽい色で、太陽系の彗星や有機物の多い小惑星に似た表面を持っていました。
2017年10月19日、ハワイ大学のパンスターズ1望遠鏡が見つけました。太陽にいちばん近づいたのは、発見より前の9月9日です。そのときの速さは秒速約87.3kmでした[8]。
軌道は太陽のまわりを回る楕円ではなく、一度通り過ぎたら戻らない形(双曲線)でした。このため太陽系の外から来たとわかり、「1I」(1番目の恒星間天体)という番号が付きました[1]。
オウムアムアについて、2019年の研究者チームの総まとめは、どの観測も自然の天体として説明できると結論しています[4]。
02 どうやってわかったのかオウムアムアの何がなぞなの?
オウムアムアのなぞは、ガスやちりが見えないのに、太陽から遠ざかる向きの小さな加速が測られたことです。形もふつうの小惑星よりずっと細長いか平たいと推定されました。
わかっているMeechら(2017年、Nature)[1]
明るさが大きく変わることから、長さが幅の約10倍という、太陽系の天体にない細長い形と推定されました。光の反射率を0.04とすると、平均の半径は約102mです。
どうやって: 世界の望遠鏡で明るさの変化と色を測りました。回りながら明るさが大きく変わるのは、細長い物が向きを変えているためと考えました。
わかっているMicheliら(2018年、Nature)[2]
オウムアムアの動きには、重力だけでは説明できない加速がありました。太陽から外向きで、太陽から離れるほど弱くなる加速です。統計的にはほぼ確実(30σ)な結果でした。
どうやって: 地上と宇宙の望遠鏡で位置を細かく測り、軌道を計算しました。いくつかの原因を調べたうえで、彗星のようにガスを出していることが、物理的にありうる説明だとしています。
わかっているTrillingら(2018年、The Astronomical Journal)[3]
スピッツァー宇宙望遠鏡で30.2時間見つめても、オウムアムアは写りませんでした。ここから、同じ体積の球にしたときの直径は98〜440m以下とわかりました。一酸化炭素や二酸化炭素のガスも、ほとんど出ていませんでした。
どうやって: 天体が出す赤外線(熱)の量から大きさと反射率を見積もりました。ガスの上限がきびしいので、加速には別のガスが必要だと論じています。
有力な仮説Mashchenko(2019年、Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)[5]
明るさの変化をくわしく計算し直すと、葉巻形(縦横1:8)より、薄い円盤形(1:6)のほうがずっとありそうだと示しました。光の変化を再現できる見込みは、円盤形で91%、葉巻形で16%でした。
どうやって: 回転と、ガスの噴き出しによるひねりの力を入れたモデルで、観測された明るさの変化に合う形を探しました。
有力な仮説Bergner・Seligman(2023年、Nature)[6]
水の氷でできた天体が、星と星のあいだを旅するあいだに宇宙線を浴び、氷の中に水素ができる。太陽に近づいて温まると、その水素が出てきて天体を押す。この仕組みでオウムアムアの加速を説明できるとしました。
どうやって: 水の氷に放射線を当てると水素ができて閉じ込められるという実験の結果をもとに、出てくる水素の量と加速を計算しました。水素は見えにくいため、ガスが見つからなかったこととも合います。
03 数字と例えでいうと見つかった3つの恒星間天体はどう違う?
これまでに見つかった恒星間天体は3つです。オウムアムアだけがガスやちりを見せず、2I/ボリソフと3I/ATLASは、はっきりした彗星でした。
| 天体 | 見つかった日・特徴 | 身近な例えでいうと |
|---|---|---|
| 1I/オウムアムア | 2017年10月19日。ガスやちりは見えず、平均の半径は約102m(反射率0.04の場合)[1][8] | 太陽のそばで秒速約87.3km。時速にすると約31万km(計算) |
| 2I/ボリソフ | 2019年8月30日、ゲナジー・ボリソフが発見。ちりの雲と尾があり、核の半径はおそらく約1km[9] | 太陽系から遠く離れたときの速さは秒速約32km。太陽系の彗星と見分けがつかない |
| 3I/ATLAS | 2025年7月1日発見。ちりの雲をまとう。遠く離れたときの速さは秒速約58km[10] | 核の直径は、2025年8月20日時点の観測で440m〜5.6kmと幅がある。地球には最も近いときでも約1.8天文単位で、危険はなかった[11] |
1天文単位は地球と太陽の平均距離(約1億5000万km)です。3I/ATLASは2025年10月30日ごろ、太陽から約1.4天文単位のところを通りました[11]。
04 まだわかっていないことオウムアムアの加速の原因はまだ謎?
オウムアムアの加速の原因は、まだ決着していません。水素や窒素の氷のガス、太陽の光の圧力などの説がありますが、どれも確かめる観測が足りず、オウムアムアはもう遠くへ去ってしまいました。
- 何のガスが押したのか窒素の氷のかけら(冥王星のような天体の表面がはがれたもの)とする説[7]や、水の氷の中にできた水素とする説[6]があります。2023年の論文は、純粋な水素・窒素・一酸化炭素の氷とする説には、理論や観測との食い違いが残ると書いています[6]。
- 太陽の光に押された薄い板なのかBialyとLoebは2018年、厚さ0.3〜0.9mmほどの薄い板なら、太陽の光の圧力で加速を説明できると計算し、その起源として人工の「光の帆」の可能性にも触れました[12]。ただし2019年の研究者チームの総まとめは、観測はすべて自然の天体と矛盾しないと結論しており[4]、人工物とする考えは主流ではありません。
- 本当の形と大きさ葉巻形か円盤形かは、明るさの変化から間接的に推定したもので[1][5]、直接の画像はありません。大きさも反射率をどう置くかで数倍変わります[3]。
05関連する記事
06よくある質問
オウムアムアは宇宙人の宇宙船だったの?
その証拠は見つかっていません。2018年に、太陽の光で押される薄い板なら加速を説明でき、人工の光の帆の可能性もあると論じた論文はありました。しかし2019年の研究者チームの総まとめは、観測はすべて自然の天体として説明できると結論しており、宇宙船説は研究者の主流ではありません。
オウムアムアはどんな形?
明るさの変化から、長さが幅の約10倍の葉巻形と推定されました。その後の計算では、薄い円盤形(縦横1:6)のほうがありそうだという結果も出ています。直接の画像はないため、形は決まっていません。
オウムアムアの加速の原因は何?
まだ決着していません。彗星のようにガスを出したという説明が有力で、何のガスかについては、水の氷の中にできた水素、窒素の氷などの説が対立しています。
太陽系の外から来た天体はいくつ見つかっている?
確かめられているのは、2017年の1I/オウムアムア、2019年の2I/ボリソフ、2025年の3I/ATLASの3つです。2I/ボリソフと3I/ATLASは、ちりの雲をまとった彗星でした。
オウムアムアは今どこにいる?
太陽の重力から逃げる軌道で、太陽系の外へ向かって遠ざかっています。NASAは、2018年5月ごろに木星の軌道、2019年1月ごろに土星の軌道の外を通ると見積もっていました。遠ざかるにつれて暗くなり、望遠鏡で観測できた期間は限られていました。
出典
- Meech, K. J., Weryk, R., Micheli, M., Kleyna, J. T., et al. (2017). A brief visit from a red and extremely elongated interstellar asteroid. Nature 552, 378–381. https://doi.org/10.1038/nature25020
- Micheli, M., Farnocchia, D., Meech, K. J., Buie, M. W., et al. (2018). Non-gravitational acceleration in the trajectory of 1I/2017 U1 ('Oumuamua). Nature 559, 223–226. https://doi.org/10.1038/s41586-018-0254-4
- Trilling, D. E., Mommert, M., Hora, J. L., Farnocchia, D., et al. (2018). Spitzer Observations of Interstellar Object 1I/'Oumuamua. The Astronomical Journal 156, 261. https://doi.org/10.3847/1538-3881/aae88f
- 'Oumuamua ISSI Team (Bannister, M. T., et al.) (2019). The natural history of 'Oumuamua. Nature Astronomy 3, 594–602. https://doi.org/10.1038/s41550-019-0816-x
- Mashchenko, S. (2019). Modelling the light curve of 'Oumuamua: evidence for torque and disc-like shape. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 489, 3003–3021. https://doi.org/10.1093/mnras/stz2380
- Bergner, J. B., Seligman, D. Z. (2023). Acceleration of 1I/'Oumuamua from radiolytically produced H2 in H2O ice. Nature 615, 610–613. https://doi.org/10.1038/s41586-022-05687-w
- Jackson, A. P., Desch, S. J. (2021). 1I/'Oumuamua as an N2 Ice Fragment of an exo-Pluto Surface: I. Size and Compositional Constraints. Journal of Geophysical Research: Planets 126, e2020JE006706. https://doi.org/10.1029/2020JE006706
- NASA Science. 'Oumuamua. https://science.nasa.gov/solar-system/comets/oumuamua/
- Guzik, P., Drahus, M., Rusek, K., Waniak, W., et al. (2020). Initial characterization of interstellar comet 2I/Borisov. Nature Astronomy 4, 53–57. https://doi.org/10.1038/s41550-019-0931-8
- Seligman, D. Z., Micheli, M., Farnocchia, D., Denneau, L., et al. (2025). Discovery and Preliminary Characterization of a Third Interstellar Object: 3I/ATLAS. The Astrophysical Journal Letters 989, L36. https://doi.org/10.3847/2041-8213/adf49a
- NASA Science. Comet 3I/ATLAS. https://science.nasa.gov/solar-system/comets/3i-atlas/
- Bialy, S., Loeb, A. (2018). Could Solar Radiation Pressure Explain 'Oumuamua's Peculiar Acceleration? The Astrophysical Journal Letters 868, L1. https://doi.org/10.3847/2041-8213/aaeda8


