宇宙の始まりと終わり

宇宙背景放射はどう見つかったのか、ペンジアスとウィルソンのアンテナ

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ペンジアスとウィルソンが使ったベル研究所のホーン・アンテナ
Photo: NASA, restored by Bammesk / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査論文と公的機関の資料をAIが調べ、内容を確かめて整理しました(出典は末尾)。

ビッグバンのいちばん有名な証拠は、宇宙を探すために作られたのではないアンテナで見つかりました。1965年、米国ベル研究所のペンジアスとウィルソンは、どうしても消えない雑音に悩んでいました。アンテナの中のハトのふんを掃除しても、雑音はほとんど減りませんでした。その正体が、宇宙のはじまりの名残の光でした。

3行でわかる

  1. ベル研究所のアンテナで、波長7.35cmの電波を測ると、どの方向からも説明できない約3.5K分の雑音が入っていた。
  2. ハトの巣とふんを片づけ、継ぎ目をテープでふさいでも、雑音はわずかしか減らなかった。ハトが原因だったのではない。
  3. プリンストン大学のディッケらは、この電波を予想して測る準備をしていた。1965年に2本の論文が並んで出て、1978年にペンジアスとウィルソンがノーベル物理学賞を受けた。

01 わかっていること宇宙背景放射はどう見つかったの?

宇宙背景放射は、ベル研究所のペンジアスとウィルソンが、電波アンテナの雑音の原因を探すうちに見つけました。空のどの方向からも同じように届く、約3.5K分の電波でした。

2人が使ったのは、ニュージャージー州のクロフォード・ヒルにある、20フィート(約6m)の、角笛のような形をしたアンテナです[6]。もとは人工衛星との通信のために作られ、1963年に通信の役目を終えてから、電波天文学に使われました。

2人は、波長7.35cmで空の電波をとても正確に測ろうとしていました。ところが、大気・天の川・アンテナ自体から来るはずの分を全部引いても、約3.5K分の雑音が余りました[1][6]。宇宙背景放射とは何かはビッグバンの証拠の記事で書いています。

02 どうやってわかったのかハトのふんの話は本当?

本当です。ウィルソン自身がノーベル賞の講演で話しています。ただし、ハトの巣とふんを片づけても雑音はわずかしか減らず、雑音の原因はハトではありませんでした。

わかっているWilson(1978年、ノーベル物理学賞受賞講演)[6]

アンテナの細い部分に、2羽のハトがすみついていました。中は「都会に住む人ならおなじみの白いもの」でおおわれていました。ハトを追い出して掃除しても、雑音はわずかしか下がりませんでした。

どうやって: 1965年春には、アンテナをすっかり掃除し、板の継ぎ目にアルミテープを貼りました。それでも少ししか下がりませんでした。約1年たっても雑音が変わらなかったので、太陽系の中のものや、1962年の高空での核実験の影響も外せました。

わかっているPenzias & Wilson(1965年、The Astrophysical Journal)[1]

周波数4080メガヘルツ(波長7.35cm)で、アンテナの温度が予想より約3.5K高いことを報告しました。題名は「4080Mc/sでのアンテナの余分な温度の測定」です。

どうやって: アンテナの雑音を、温度のわかった基準と切りかえながら比べて測りました。2人は宇宙のはじまりの理論づくりに関わっていなかったので、この論文では理論の話をあえて書きませんでした[6]。

わかっているDicke, Peebles, Roll & Wilkinson(1965年、The Astrophysical Journal)[2]

プリンストン大学のディッケのグループは、宇宙がとても熱い状態を通ってきたなら、その名残の電波が今も届いているはずだと考え、測る装置を作っていました。ピーブルスは、その温度を少なくとも10Kと見積もっていました[6]。

どうやって: ペンジアスがMITのバーナード・バークと別の話をしていて雑音のことを話し、バークがピーブルスの研究を思い出しました。ペンジアスがディッケに電話し、ディッケらがベル研究所を訪ねて、2本の論文を並べて出すことになりました[6]。

03 数字と例えでいうと予想と測定の温度はどれくらい?

1949年の予想は約5K、1965年の測定は約3.5K、今の精密な値は2.72548Kです。どれも、絶対零度(約−273℃)よりわずか数度高いだけの冷たさです。

だれが・いつ温度身近な例えでいうと
アルファーとハーマン(1949年、予想)約5K[3][6]約−268℃。測定より16年以上前の予想
ピーブルス(1965年、予想)少なくとも10K[6]約−263℃
ペンジアスとウィルソン(1965年、波長7.35cm)約3.5K[1]約−270℃
ロールとウィルキンソン(1965年12月、波長3.2cm)3.0±0.5K[4][6]別の波長でも同じくらいだと確かめた最初の測定
今の精密な値2.72548K[5]約−270.4℃

ペンジアスの講演によると、アルファーとハーマンは「数K」と見積もりましたが、それが電波として測れるとは考えていなかったようです[7]。1964年には旧ソ連のドロシケビッチとノビコフが、測るならベル研究所のこのアンテナがいちばんよいと書いていましたが、ほとんど気づかれませんでした[7]。

04 まだわかっていないこと宇宙背景放射でまだ解けていない謎は?

宇宙背景放射から、宇宙が一瞬で大きく膨らんだ証拠となる「原始の重力波」の跡はまだ見つかっていません。また、この光から求めた宇宙の膨張の速さが、近くの星で測った値と合わない問題も残っています。

05関連する記事

06よくある質問

宇宙背景放射は誰がいつ見つけたの?

米国ベル研究所のアーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンが、1965年に論文で報告しました。波長7.35cmの電波を測るアンテナに、どの方向からも約3.5K分の説明できない雑音が入っていたのが始まりです。2人は1978年にノーベル物理学賞を受けました。

ハトのふんが原因だと思われていたのは本当?

アンテナにハトが2羽すみつき、中がふんでおおわれていたのは本当で、ウィルソン自身がノーベル賞の講演で話しています。ただし、ハトを追い出して掃除しても雑音はわずかしか減らず、雑音の原因はハトではありませんでした。

宇宙背景放射は発見の前から予想されていたの?

予想されていました。1949年にアルファーとハーマンが今の温度を数K(ウィルソンの講演では5K)と見積もり、1965年にはプリンストン大学のディッケのグループが測る装置を準備していました。ペンジアスとウィルソンは、その研究を知らないまま先に見つけました。

宇宙背景放射の温度は今いくつ?

今の精密な値は2.72548K(約−270.4℃)です。1965年の最初の測定は約3.5Kで、その後の人工衛星などの観測で精密になりました。

出典

  1. Penzias, A. A., Wilson, R. W. (1965). A Measurement of Excess Antenna Temperature at 4080 Mc/s. The Astrophysical Journal 142, 419. https://doi.org/10.1086/148307
  2. Dicke, R. H., Peebles, P. J. E., Roll, P. G., Wilkinson, D. T. (1965). Cosmic Black-Body Radiation. The Astrophysical Journal 142, 414. https://doi.org/10.1086/148306
  3. Alpher, R. A., Herman, R. C. (1949). Remarks on the Evolution of the Expanding Universe. Physical Review 75, 1089–1095. https://doi.org/10.1103/PhysRev.75.1089
  4. Roll, P. G., Wilkinson, D. T. (1966). Cosmic Background Radiation at 3.2 cm—Support for Cosmic Black-Body Radiation. Physical Review Letters 16, 405–407. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.16.405
  5. Fixsen, D. J. (2009). The Temperature of the Cosmic Microwave Background. The Astrophysical Journal 707, 916–920. https://doi.org/10.1088/0004-637X/707/2/916
  6. Wilson, R. W. (1978). The Cosmic Microwave Background Radiation. Nobel Lecture, 8 December 1978. https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/wilson-lecture-1.pdf
  7. Penzias, A. A. (1978). The Origin of Elements. Nobel Lecture, 8 December 1978. https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/penzias-lecture.pdf
  8. BICEP/Keck Collaboration (2021). Improved Constraints on Primordial Gravitational Waves using Planck, WMAP, and BICEP/Keck Observations through the 2018 Observing Season. Physical Review Letters 127, 151301. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.127.151301
  9. Planck Collaboration (2020). Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters. Astronomy & Astrophysics 641, A6. https://doi.org/10.1051/0004-6361/201833910
  10. Riess, A. G., Yuan, W., Macri, L. M., et al. (2022). A Comprehensive Measurement of the Local Value of the Hubble Constant with 1 km/s/Mpc Uncertainty from the Hubble Space Telescope and the SH0ES Team. The Astrophysical Journal Letters 934, L7. https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac5c5b